静岡県立藤枝特別支援学校 焼津分校

ご存じでしたか?静岡県立焼津水産高校の校内にもう一つ学校があることを。現生徒数は47名。 2013年に開校し、焼津の地に根を張り始めたばかりの小さな、けれども活力に満ちた高校です。

どんな学校なの??

同校は「地域で自立し、地域で貢献する人」を理想の生徒像として掲げ、社会で働く力を養うための作業学習に力を注いでおり、地域企業からの委託作業や、現場での職業実習、校内での自主生産作業といった授業が充実しています。自主生産した製品はどれもクオリティーが高く、ほとんどは水産高校の文化祭、「水高祭」での販売を目標に制作されますが、なんと地元の雑貨店で販売契約がとれることもあります。 芸術の分野でも生徒たちのセンスがキラリと光輝きます。美術室にある真っ白な石膏像も、絵の得意な生徒にかかればカラフルで鮮やかな姿に大変身。常識に囚われない感性がそこにあります。社会で働いていくためのスキルだけではなく、一人ひとりの特質を理解し、長所を伸ばしていくのが、焼津分校を含む、藤枝特別支援学校の特色なのです。 地域との関係が深ければ深いほど生徒たちの経験の場は豊かになります。11月12日(土)の水高祭一般公開日には、分校の方にもぜひ足を運んでみてください。

継承せよ、荒祭の伝統。

日本武尊(やまとたけるのみこと)を焼津の守護神としてお祀りする焼津神社は1600年以上もの歴史があります。毎年8月12日と13日に行われるその祭事は「荒祭」と呼ばれ、焼津の人々は心待ちにしています。この大祭が「東海一の荒祭」とまで称される所以、それは何といっても豪快な神輿行列にあります。白装束を着た人々が路上にひしめき合い、「アンエットン」という掛け声とともに神輿を本殿から町にお迎えする儀式はまさに壮観。盛大な祭事を毎年成功させるためには、神社と町による入念な準備が欠かせません。四町が藤組、竹組、柳組、桜組と名付けられ、運営の中心となる「年行司」を年ごとに当番制で担い、大祭の翌月からは早くも次の準備を始めます。また、祭事に必要な神役を担う青年が8月1日から大祭当日まで神社に泊り込み、身を清める慣習もあります。大祭の裏には町内の人々の努力があり、祭事の全てには神様をお迎えするための神聖な意味が込められているのです。その一つが白装束。神様をお祀りするため、そして伝統を受け継ぐためにもその正しい着付けを守るのは参加者の重要な務め。素朴さ、純粋さを表す白装束に身を包み、今年も焼津の人々は清き心で神様をお迎えします。

小説に描かれた「焼津」

じとーっと暑い真夏の夜にはとっておきの怪談を。「耳なし芳一」はいかがでしょう。焼津はその著者、ラフカディオ・ハーンが晩年にこよなく愛した地でもあります。またの名を小泉八雲(1850‐1904)。生まれはギリシャですが、日本との出会いをきっかけに本国の風土や慣習に関心を抱き、それに基づいた多くの物語や記録を著し世界に紹介した人物です。日本の怪談もその興味対象の一つで、怨霊に取り憑かれた盲目の琵琶法師の物語、「耳なし芳一」は、彼の『怪談』の中に収録されて世間に広まりました。そんな八雲にとっての特別な場所が焼津だったのです。素朴な人々や息づく伝統、景色、すべてが魅力的に映ったのでしょう。夏になると毎年この地を訪れました。 「焼津にて」の中では詩的に焼津の風景が記述されており、八雲の見た「焼津」を感じることができます。「漂流」や「乙吉のだるま」など、八雲はどこか神秘的で情緒ある、焼津にまつわる作品をいくつも著しています。八雲の世界への扉が焼津にはあるのです。